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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「誰が土蔵破りか解らないから、うっかり案内を頼めないよ、お前さんなら大丈夫だろう」

「…………」

お徳は生真面目にうなずいて、廊下伝いに土蔵へ案内しました。

二た戸前の土蔵ですが、五千両持出された方は、廊下続きの内蔵で、廊下の雨戸は外から破られ、主人の部屋から持出した鍵で、二重の締りを易々と開け、中から明日の用意に積んであった千両箱を五つ、物の見事に持出してしまったのです。

「ところでお徳さん、――この店中で、主人から一番信用されているのは誰だろう」

平次は妙な事を訊ねました。

「殺された正次郎さんでしたよ、――嘉助さんも、あの通り年を取ったし」

お徳は躊躇する様子もなくこう言い切ります。

「福三郎は?」

「可愛がられてはいましたけれど、――お金の事は任せてくれなかったようです」

お徳は少し淋しそうでした。許嫁の福三郎が、どんなに良く勤めても、正次郎ほどの信用のなかった口惜しさを、処女らしく隠そうともしません。

「親分さん、私が御案内いたしましょう、――お徳さんはお茶の支度でもするがいい」

大番頭の嘉助は、店中の者の不安を代表してやって来ました。

「それはいい塩梅だ。