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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
「名前は銅六、――銅屋六兵衛と言うんだ、女房はお浜、二人とも江戸の生れだ」
銅六は昂然としておりますが、言う事は思いの外素直です。
「銅六――そうか、いい悪党だ。何だって五千両の餌なんぞに引っ掛ったんだ」
「へッへッ、銭形の親分さん、――へッへッ存じていますよ、一度は鼻を明かせようと思った相手だ。忘れてなるものか、――」
「そんな事はどうでもいい、俺は大方筋書を読んだつもりだが、――お前の口から聴きたい、店で手引をしたのは誰だ」
「へッ、へッ」
「福三郎か、嘉助か――」
「へッ、へッ、お察しの通りで、銭形の親分はさすがに眼が高え」
書き損ねの達磨のような髯面を歪めて、銅六はニヤリニヤリと笑うのです。
「馬鹿野郎」
銭形平次は立ち上がると、いきなり平手で銅六の頬桁を一つ喰らわせたのです。「平次が縄付きを撲つ――」こんな事があり得るでしょうか、ガラッ八は眼の前で行われた奇蹟に仰天するばかりです。
「あッ」
銅六もあまりの不意に、さすがに度胆を抜かれた様子です。
「たった今この平次の鼻を明かしてやりたいと言ったのは誰だ、そんな間抜けな心掛けだから、五千両チョロリと横取りされて、犬の子の死骸の番人なんかしているじゃないか、そのうえ正次郎殺しの罪でも背負い込んで、三尺高え木の上へ顎を載っけりゃ世話アねえ」