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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

「親分、下手人は誰でしょう」

八五郎はたまり兼ねて声を掛けました。

「判らねえよ」

「五千両はどこへ持出したでしょう」

「それが判りゃ下手人は一刻(二時間)経たないうちに挙げられる」

平次も本当に手掛りを掴めなかった様子です。

「福三郎じゃありませんか――大黒屋の遠縁の者だが、番頭にもしてくれず、当分は暖簾をわけて貰う当てもなく、思い合っているお徳と祝言をする見込みも立たず、主人の市兵衛を少しは怨んでいる様子ですが――」

これがガラッ八のカンでしょう。

「それは俺にも解るが、福三郎は腹から善人で、おまけに気が弱い。カッとなったら人を殺せないこともあるまいが、企んで人を害める柄じゃないし、それに五千両を隠すなんて器用なことの出来る男じゃねえ」

「…………」

場末の芝居の二枚目のような福三郎は、なるほど人を殺せそうもありません。

その晩は何事もなく明けて、翌る日の朝、辰刻(八時)少し廻った頃――。

「親分さん、大変なことが起りました」

大黒屋のお徳が、お静に案内させて入って来ました。

「何だ、お徳さん、五千両見付かったのか」

「いえ、柳橋下から、小判が八百何十枚か入った千両箱が揚がって大騒ぎですよ」