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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
「違う、――そんな、そんな馬鹿なッ」
お徳は必死と身を揉みますが、先刻の芝居が過ぎて、あまりに厳重に縛られたので、どうすることも出来なかったのです。
少し蒼ざめた美しい顔にはタラタラと油汗を流し、唇を噛んだ血が豊かな顎に紅い糸を引いて、その凄まじさはありません。
「皆んなの衆、ここへ来て聴いてくれ、隣の仏間には仇同士の仏様が二つも居る。俺の言う事が違ったら、その時は違ったと言って貰おう、証人は二人の仏様だ」
平次は美しい虫のように藻掻くお徳を見下ろしながら続けました。
「千両箱を五つ持出したのは正次郎だ。福三郎はそれを見付けて、路地で争ううち、お徳も起きて来て、福三郎に手伝い、とうとう、絞め殺してしまった、――福三郎はびっくりして人を呼ぼうとしたが、お徳は女ながら福三郎より三倍も五倍も太いから、正次郎の頸から自分の真田紐を解いて、荒縄で頸を締め直し、千両箱一つ叩き破って、中の小判をバラ撒き、残りは柳橋の下へ沈めた。これは外から悪者が入ったと見せかけ、あとの四千両を横領するつもりの細工だ」
「…………」
平次の明快な推理に、誰も口を挟む者はありません。
「そう言っちゃ悪いが、主人は正次郎にも福三郎にもお徳にも辛く当った。