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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(五)金の鯉
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens
お徳の唇にはもう嘲笑が蘇生ります。
「あんな重いもの?」
平次は鸚鵡返しに言いました。千両箱というと、一両小判で千枚、一枚四匁としても四貫目、風袋を加えると一つ五貫目は下りません。華奢な福三郎が、たった一つ柳橋まで持運ぶのでさえ大変な骨折だったでしょう。
「解った」
平次は立上がりました。傍目も振らずに元の蔵の中へ。――
「親分、蔵から出た事は確かですぜ」
とガラッ八。
「また蔵へ戻したのだよ。それに気が付かないとは、俺も大間抜けさ」
平次は千両箱を七つも積んであったところへ来ると、その床の上に敷いた樫の一枚板を取りのけ、窓から射す陽の光をたよりに、床板を動かしてみました。
厳重そうに見えた釘が何の苦もなく抜けて、板が二三枚剥がされると、その下は重い物を置くために井桁に組み上げた特別の土台で、その土台の中ほど、外からはどうしても見えようのない僅かばかりの隙間に、四つの千両箱を縦に並べて落し込み、その上を埃と土とで丁寧に蔽ってあったのです。
「あった」
主人市兵衛の狂喜する顔、平次とガラッ八はそれを見捨てて元の部屋に帰ると、二人の仏の前に、縛られたままのお徳は舌を噛み切り、のた打廻って苦しんでいたのです。