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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(五)金の鯉 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 136,062 characters · 276 screens

Aozora Bunko

公儀の届が済めば三日たたないうちに、軍鶏のように締められるよ」

「そんな、そんな馬鹿な事があるものか。お前は、何だ、畜生ッ」

「馬鹿だか馬鹿でねえか、四つの眼で見て帰ったんだ。物は試し、屋敷へ帰って井戸端を覗いてみるがいい。若い娘があられもない姿で縛られていたら、俺の言うのが本当だと思え。お主の大事も忘れて、酒ばかり飲んで歩きやがって万一あの娘が死んだら、手前は腹でも切らなきゃア済むめえぜ」

平次の言葉は、囁き加減ですが、噛んで含めるように、半蔵の肺腑に喰い込んで行きました。

「畜生ッ、どうするかみやがれ」

半蔵は、湯呑を土間に叩きつけると、スックと立ち上がりました。

「急いで行って来い。二三人打ちのめしても構わないから、娘を引っ担いで来るんだぜ」

「手前達もここを動くな」

と半蔵。

「いいとも」

半蔵は外へ出ると、少しよろめく足を踏みしめて、北町の方へ、颯と飛んで行きます。

「あッ、勘定は?」

奥から飛出す親爺を、

「放っておけ、勘定は俺が払ってやる」

平次は大手を拡げる形に止めました。

「親分、どんな事になりましょう」

とガラッ八。

これは半蔵の消え込んだ闇をいつまでも見詰めておりました。