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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens
相模屋綱吉が、後ろで意地の悪い目を走らせると、平次は煮えくり返るような思いです。もし、このまま引下がるような事になったら、わざわざ引返させた検使の手前、自分は腹でも切らなければ納まりません。
「この箱を一日私に借しては頂けませんか」
とうとう弱音を吐いた平次。
「馬鹿な事を申せ」
少し焦々しているらしい検使に、たった一と言で止めを刺されてしまいました。
「…………」
平次は黙って目をつぶりました。必死の目先に、チラリと映るのは、お品の顔、お勢の顔、お寅の死顔、それから、あの藤次郎とかいう指物師の醜い顔です。
何心なく眼を開くと、本堂の隅、物の蔭に、その醜い顔が居るではありませんか。
――あいつは指物師だ、いや、――あの指物師が仲間だったのだ――
平次は豁然としました。二重蓋の中を見ると、容易に見分けは付きませんが、中の札の木目に、何やら異状があるようです。その辺にある富籤を一枚拾って当てると、その変った木目の部分にちょうどピタリとはまります。
「これだッ」
平次の頭には、電光のような霊感が湧きました。箱の外壁をグルリと撫で廻すと、所々に打った厳しい鋲の一つが、どうやら心持動くではありませんか。