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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

「弱ったなア、――この葛籠の中はどんなもんで」

「お前入ってみるか」

「親分は?」

「菰の中へ隠れよう、水垢で少しジメジメするが」

平次とガラッ八がどうやらこうやら身を隠した時、曲者二人は帰って来ました。

「悪くねえ商売だな吉、和蘭カルタが三両だ、――こいつは親分には内緒だぜ」

「いいとも、その代り一両は口止めによこせ」

「まア仕方がねえ。ところで、この辺で江戸も切上げだろうな」

「こんな仕事の深入りはよくねえよ」

曲者二人、静かに小舟を漕いで行きます。

それから半刻(一時間)あまり。

小舟は越中島を廻って、洲崎六万坪の沖あたりまで来ました。

「親船は見えるかえ」

「灯がないから見当はつかねえが、この辺から遠くはねえと思うよ」

「月が出たら判るだろう、ゆっくり漕げ」

「お、そこに居るぜ、声を掛けてみようか」

「どっこい、うっかり声を出して、見張りの船にとがめられるとうるさいぜ」

曲者の話を聞いて、平次は菰の中から顔を挙げました。一二町先に、陸地近く泊っているのは、灯も何にもない、二三百石積みの船です。

ここまで見定めておけば、もう大丈夫です。

「…………」

御用とも何とも言わず、ツイ鼻の先で櫂を握っている男の脇腹を、思い切り一つ突きました。