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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(六)結納の行方

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 142,597 characters · 289 screens

Aozora Bunko

「そこにはお寿とお政の外には誰も居なかったのかい」

「山口屋と取巻きの連中は屋根の中で、お燗番と船頭は艫でさ」

「なるほどな」

「お寿はあんまりびっくりして声も出なかった。ア、ア、と言ううちに、五六間流されたお政が、幸い通り掛った他の涼み船の船頭に引上げられて、さんざん水は呑んだが、命だけは助かったそうですよ」

「それは危ないな、お政は水心がなかったのか」

「小唄の師匠が泳ぎを知っているわけはありません。もっとも、突き落されると、前以て解っていれば、泳ぎの稽古ぐらいはしたかも知れませんが――」

「皮肉を言うな、八」

「ところで親分、これがあべこべだと話になりませんよ。お寿は佃で育って、あんな華奢に見えるくせに、泳ぎは河童の雌ほどうまいそうですよ」

「河童に雌があるのかい」

「雄がありゃ雌だってありますよ」

無駄は入りますが、ガラッ八の話は次第に面白くなります。

「それから、八五郎さんの弟子入りとなって、一日顔を見せなきゃア、呼出しが来るというわけか」

「へッ」

「満更じゃねえな、八。小唄お政に呼出しをかけられるのは、一千人という弟子の中でも、手前一人だろう」

「まだありますよ」