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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

「フーム」

平次もだいぶおもしろくなった様子です。

「すると、それならそれでいいとして、お袖の聟はどこの何という者だ。拵えごとはならぬぞ。――それを聴こうと詰寄られた」

「面白いな」

「少しも面白くはありません。番頭の庄七は因業なことに商売のことしか掛引を知らねエ。――さア、何とか、返答せいッ――と脇差をひねくられると、青くなって一句も出ない。仕方がないから、あっしが引受けて一世一代の大嘘を吐いたね、親分」

「嘘は晦日が来るたびに吐いてるじゃないか。一世一代もないものだ」

「茶にしちゃいけませんよ。ね、親分――何と言ったと思います。あっしはいきなり襟を直して、こう正面をきったね。――憚りながら、上総屋お袖の聟というのは、この八五郎でござんす――と」

「馬鹿野郎ッ」

「それね、親分だって驚くくらいだもの、向うはもっと驚いた。しばらくあっしの顔をまじまじと見ていたが、通三丁目の小町娘の聟らしくないと気が付いたか、無礼者ッ、嘘を申すと手討にするぞと来た。こうなると意地だ、あっしはいきなり尻を捲って――」

「分ったよ。沓脱に坐ったまではいいが、ピカリと来ると、生垣を突き破って逃げ出したんだろう。