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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
五
こんな事で一向要領を得ぬまま、平次は引揚げなければならなかったのです。いつまで待っても権次は仕事を始めそうもありません。
「八、あの権次の身持をよく捜ってみてくれ。大した役に立たないかも知れないが、念のためだ」
「親分は?」
「俺はあの子供の着物の匂いを突きとめに行くよ」
「ヘエ――」
「もっともどこへ行ったものか、俺にも見当はつかないよ。香木屋かな、香道の先生かな、それとも寺方かな」
平次も首を捻っております。
五
その翌る朝、もう一度ガラッ八が飛込んで来ました。
「親分、大変ッ」
「サア、とうとう来やがった、お前が飛込んで来そうな日和だと思ったよ」
平次は空模様などを見ながら、からかい気味に言うのです。
「落着いていちゃいけませんよ、本当に大変なことになったんで」
「子供たちが帰ったのか」
「そんな事なら驚きゃしません、また菊坂に人殺しがあったんですよ」
「何? また菊坂に? 誰が殺されたんだ」
「鋳掛屋の権次」
「よし、行ってみよう」
平次は十手を懐中にねじ込むと、もう立ち上がっておりました。そこから菊坂までは、ほんの一と飛び。
鋳掛屋の権次は、かつて五人の子供が行方不明になった空地の真ん中ほどに、紅に染んでこと切れていたのです。