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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

二

二

即日平次は八丁堀組屋敷に、お南の与力筆頭笹野新三郎を訪ねました。

「旦那、八五郎の奴がこんなことを申しますが、どうしたものでございましょう」

打ち明けた相談をする平次を、笹野新三郎は頼もしく見やりながら、

「一応尤もだが、天下静謐の折柄、無理な詮索をして江戸から切支丹邪教徒を挙げるのは面白くない。原主水一味の刑死以来、久しく血腥い邪宗徒の仕置が絶えているのだから――」

笹野新三郎の顔は暗く翳るのです。この人は若くて聡明で、法外な平次贔屓ですが、与力には珍しく内気で、どちらかというと、学者らしい肌合の人でもあったのでした。

「私もそう思って、一応八五郎を押えました。放火の現場を見付けたわけでもないのに、火元が寺方に多いからと、いきなり切支丹詮索をするのは、少し虐たらしいようにも思いますので」

せっかく表向きだけでも転んで(改宗)平穏な生活をしている切支丹宗徒たち、それをほじくり出して、磔柱に載っけるのは、銭形平次の忍ぶところではなかったのです。

この話はしかし、この場限りでは済みませんでした。

ちょうど御用のことで、同じ組屋敷に来合せていた三輪の万七が、隣の部屋で、笹野新三郎と平次の話を、残らず盗み聴いてしまったのです。