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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
五
「それからどうした」
「二つ三つねじ合ったと思うと、――口惜しいがこの通り、手もなくやられましたよ。藪の中へ投り込んで、『あばよ』だってやがる。親分の前だが、口惜しいの何のって――」
ガラッ八は手放しのまま、ポロポロと涙をこぼすのです。
「馬鹿野郎ッ」
平次の声はりんとしました。
「…………」
「なんだって夜っぴて後を跟けなかったんだ」
「ヘエー」
「ヘエ、じゃないよ。齧り付いたら、雷鳴が鳴っても離さないのが岡っ引のたしなみだ。見ればガン首も手足も無事じゃないか」
「ヘエ」
「それとも何か動きのとれない証拠でも押えて来たのか」
「お生憎様で」
「お生憎様てえ奴があるか、馬鹿だなア」
平次もとうとう噴き出してしまいました。
「もう一度行きますよ、親分。明日は姿を変えて平内様のお堂の前に頑張って、三日分ばかり兵糧を背負ってつけたらどんなもので――」
「勝手にするがいい」
ガラッ八は頭を抱えて飛出しました。その晩のうちに、大坂へ行くほどの仕度を整え、翌る日早々浅草へ乗込んだことは言うまでもありません。
五
その翌る日、ガラッ八は見事に使命を果しました。
「親分、大変ッ」
大変の旋風が飛込んだのは、戌刻半(九時)少し廻った頃。