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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
二
何でも名人の作で、たいそう良いものだということですが」
「フーム、面白そうだな。――その下女の身許は分っているのか」
「向柳原の大工の熊五郎が請人で、お鈴の親は遠国にいるから、葬いには間に合わない。形見の品でも送ってやる外はあるまいということで」
「そいつは気の毒だな。――とにかく気を付けて見ているがいい。若い娘が仏体を盗み出すはずはないから、何かわけのあることだろう」
平次はそんな事を言うのです。手をつけるほど纏まった事件ではないと思ったのでしょう。
京屋善八というのは、公儀御用の御紙所で町人ながら見識が高く、巨万の身代を擁している上、骨董美術――わけても仏像の蒐集家として知られておりました。本人はまだ五十を越したばかりの働き盛りですが、倅の善太郎は少し不肖で、多勢の奉公人は、番頭の久助が主人を助けて指図をしております。
綺麗な下女のお鈴は、どうして主人の蒐集の中から、極彩色の普賢像を持ち出し、大川に身を投げることになったか、今のところ八五郎の報告だけでは何にもわかりません。
二
それから十日ばかり経って、江戸はすっかり夏になりきった頃、ガラッ八の八五郎は、相変らず髷っ節を先に立てて、銭形平次の家に飛び込んで来ました。