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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

今までにもその術で三人も腰元が死んでいるじゃないか」

「…………」

「その上、御当主は病気と言って、将軍家御目見も延ばしてあるそうだが、将軍様が一と目、佐野の殿様を御覧になったら、どんなことになると思う。――瘋癲は家督になるかならないか。――どんな手蔓をたぐって家督を継いでも、こいつが知れるといっぺんにお取潰しだ。――吉兵衛の遺書と一緒に、その仔細を大目付衆まで、夜の明けないうちに届け出る手筈ができているんだぜ。どうだ御用人。いやさ、木原さん」

平次はヒタヒタと嵩にかかりました。火のような熱弁です。

「恐れ入った、平次殿」

木原伝之助は虚勢を失って、畳の上に崩折れると、次の瞬間、一刀を引抜いて、ガバと腹に突っ立てたのです。

「あ、待った」

驚く、平次、ガラッ八。

「いや、いちいち尤も。――みんなこの木原伝之助の至らぬからだ。お袖は帰して進ぜる。がその代り――この経緯はみんな内聞に願いたい。佐野家のために」

木原伝之助は紅に染んだ手を挙げて片手拝みに拝むのです。一番無情で、この上もない強かな顔をした木原伝之助は、この上もない忠義者と知って、平次もしばらくは二の句が継げません。