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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

右手には高々と構えた、四文銭が一枚。

「無礼者ッ、誰に断ってその錠前を開ける」

曲者は一刀を脇構えに叱咤しました。恐ろしく精悍な感じのする中年男です。

「四人の子供の生命を助けるのだ、誰に断ることがあるものか」

「己れッ」

サッと斬りつけて来るのを外して、平次の手から、二枚、三枚、銭が飛びます。宵月はありますが、どんな手練も、夜気を劈いて飛ぶ銭を受けようはありません。

「汝れ」

曲者は拳を打たれ、頬を打たれ、額を打たれ、顎を打たれてひるむところへ、平次は隙を見て体当りをくれました。

「野郎ッ」

後ろからはむずと組みつく八五郎の怪力。

「八、その野郎は俺一人でたくさんだ。早く土蔵を開けて中を見ろ、四人の子供が死にかけているに違いない」

「合点ッ」

八五郎はパッと土蔵の中に飛込むと、平次の手を逃れて、曲者もそれにつづきます。

「八、気をつけろ、曲者が――」

平次が声を加ける間もありません。土蔵の闇の中では、八五郎と曲者との必死の闇試合が始まっているのです。

*

その間に騒ぎを聞いて、町役人と鳶の者が駆け付けました。幸い曲者の刀は、平次の投げ銭に奪い取られて、八五郎の剛力はそれを組み伏せたところへ、灯の洪水が土蔵一パイに照らし出したのです。