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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

「夜店でとんだ掘り出し物を見付けてのう。――大名物と言ってもいいくらいな井戸の茶碗が、たった五十両だとさ。――あんな品に逢うのは、人間一生に一度の福運だ。店へ行って金を持って来て買おうと思う――留守を頼むよ」

隠居山右衛門は金持らしく人の思惑などを考えずに、自分の言いたいだけのことを言って、そのまま路地の闇に引返しました。

そこから表通りの要屋――海道筋の老舗で、代々質両替をやっている店までは、ほんの一と走りだったのです。

「チェッ、馬鹿にしているぜ」

その後ろ姿を、障子の隙間から見送って、手代の久吉は大舌鼓を打ちました。

「まア、お前」

その冒涜的な調子をとがめるようにお弓。これは隠居が戸口から引返したために、引入れた久吉が見付からなくてホッとした姿です。

もっともお勝手には二人の仲を百も承知の下女のお仲が、ガタピシと晩のお仕舞をしているのですから、隠居が帰って来たところで、言いのがれの口実はいくらでもあったことでしょう。

「茶碗一つが五十両だとさ。――それが安いって大喜びだ」

久吉の機嫌は以ての外です。

もっとも、五十両というのは当時にしては一と身上ともいうべき大金で、白雲頭の頃から奉公して、遠縁だけにろくな給金も貰わず、せっかく狙った要屋の家督は、赤の他人の、養子山之助に取られてしまった久吉としては、いつ