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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

小網町の丸屋に行って、現場の様子も見、染五郎以下の者にも会いました。が、ガラッ八が報告してくれた以外には、何の新しい発見もありません。

「土蔵の鍵は誰が持っていたんだ」

「店にありますから誰でも持出せます。若旦那を窮命させる心持さえ通ればよかったんで」

番頭の宗助は実直らしい額を撫でるのです。

「その晩若旦那は誰と誰と逢ったんだ」

平次の問いは染五郎に向けられました。

「お半に二度、お絹に一度逢いました」

「お絹さんが来た時刻と、帰った時刻は?」

「戌刻(八時)過ぎに来て亥刻(十時)前に帰りました」

染五郎は昂然と応えるのです。天地神明に恥じないといった態度です。一つはお絹を縛ったガラッ八に対する反感もあったでしょう。

「その後では?」

「お半が来て床を敷いてくれました。それっきりです」

「お半は主人を怨んではいなかったのかな」

「そんな事はありません。孤児になって困っているのを引取ったくらいで――それに気の良い女ですから、この恩を返したいと言いつづけていました」

染五郎の言葉には、何の陰影もなかったのです。

それからもういちど番頭に会って、帳面のことを訊くと、

「こんな事はないはずですが、よく調べてみると、旦那のお手許に差上げた金のうちから、二三百両不足しております。