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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
「親分、こいつは底も蓋もありそうですぜ、行ってみましょう。金杉の竹松親分には悪いが、放っておいちゃ可哀想だ」
ガラッ八の八五郎までがこんなことを言うのです。
「その晩久吉がお前のところにいたことは、お仲が知っているだけなんだね」
「え」
「そいつは誰にも言わなかったのか」
「言えば久吉どんが、ますます疑われるばかりですもの」
「それが素人料簡というものだよ。――物事を隠して一つも良いことがあるわけはない」
「でも」
「隠居のあとからすぐ外へ出たから、弁解が立たないというのか」
「…………」
「お前と別れてから、路地の死骸の側へ行くまで、ざっと四半刻(三十分)の間どこで何をしていたか。それさえ判れば久吉の疑いは晴れるわけだ」
「それを言わないそうでございます」
「よしよし何かわけがあるだろう。若い者はとんだところで依怙地になるものだ」
平次はとうとう御輿をあげました。ガラッ八と一緒に、何より先に殺された現場へ行ってみましたが、両側は塀になっていて、四方の家が思いのほか遠く、何か言い争いがあったにしても、雨戸を締めていたら、うっかり知らずに過したかも知れません。
念のために訊いて廻るうち、いきなり悲鳴に驚いて飛び出して見ると、月下の路地の中に、脇腹を短刀で刺されて、要屋の隠居は倒れていたというのです。