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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

「空家に久吉がいたというから、話がわからなくなったのさ。空家に代りを入れて、自分は外で細工をする手のあることを忘れていたんだ」

平次は面目次第もない顔をするのです。

「お弓は可哀想ですね」

「可哀想だが仕方があるまい、女は悪い男に掛り合いをつけると一生の災難だ。久吉はちょっと正直そうな顔をしているが、あんな悪い奴はないよ。自分のことしか考えない人間ほど恐ろしいものはない。一寸見は正直そうだが、腹の中は鬼だ」

「お袖兄妹はどうなったでしょう」

「俺はあの彦太郎も怪しいと思うよ。あんな細工をしたのは、茶碗を買いに行く人間の跡をつけて、途中で金を盗るつもりだったのかも知れない。五百両もする品を五十両で売るというのは変じゃないか」

「でも」

「あの妹のお袖は善人さ。女も美しい気立ても申分はないようだ。が、兄のことまではわかるものか。現にちょうどあの頃、狸穴の骨董屋の手代で、五十両剽盗に取られたという訴えが出ている」

「ヘエ――」

「でも、俺はそこまで詮索する気がなかったよ。土地の御用聞に任せておくことだ。――あの兄妹はよくよく骨董に凝る人間が憎いようだから」

平次は、そう言って八五郎のうさんな顔を見やるのでした。