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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
高木敬太郎と名指して訪ねると、道場の入口に現れたのは、二十歳前後の闊達な青年武士で、これは妹の茂野によく似た見るから気持の良い爽やかな若者です。
平次が城弾三郎の殺された事を言うと、
「それは惜しい事をした。もう少し生きていたら、この俺がやっつけるのだったが。――もっとも今までも二三度出っくわし、一度などは抜き合せるところまで行ったが、人に止められて物別れになったこともあるよ。それが知れて、父上からうんと叱られ、勘当同様にこの道場に預けられているんだ」
何の蟠りもなくこんな事を言う敬太郎だったのです。
「昨夜はどこにお出ででした」
平次は気を引いてみました。
「口惜しいが平右衛門町へは行かない。兵書の輪講で亥時(十時)までは起つことも出来なかった」
「ではもう一つ伺いますが、高木様のお仕えしたのは、どこの御藩で」
「それは言わないことになっているんだ」
「大村藩でございましょうね。――それとも平戸? 鍋島」
「…………」
「いや、とんだお邪魔いたしました。阿倍川町の父上様は重態ですよ。城弾三郎が横死した上は、御遠慮には及びません。御見舞にいらっしゃい」
「そうか、それは有難う」