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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

その手紙に何が書いてあったんです」

「見るがいい、この通りだ」

平次の出した手紙というのは、半紙に書いた字がたった三行。

城弾三郎を討ったるは宿怨を果すため

この高木勇名の仕業に相違無之

誓言仕候

とだけ、それも乱れた筆蹟で、平次の助けがなくては、ガラッ八にはとても読めません。

「やはりあの病人ですかね、ヘエー」

ガラッ八はすっかり感服しております。

「嘘だよ、八」

「ヘエ――」

「この遺書は嘘だよ。あの病人が死ぬ二三日前に這い出して、平右衛門町まで行って人を殺せるわけはない。高木勇名という人は、死ぬまで本当の下手人を庇っているのだ」

「すると下手人は、その倅の敬太郎とかいう若侍ですか」

「いや、敬太郎はあの晩兵書の輪講の幹事をやっている。一歩も出なかった」

「すると?」

「解らないか、八」

「ヘエ――」

「あの娘だよ。茂野という、今ここへ来た娘だよ」

平次の言葉はあまりにも予想外です。

「そんな馬鹿なことがあるものですか、私をかつぐつもりでしょう」

「お前をかついでも仕様があるまい」

「でもあんな可愛らしい娘が」

「可愛らしくたって、重病の父親を幾度も幾度も襲いかけた悪者――兄がそのために命を賭けて争おうとした怨敵――主家大村丹後守様まで強請るふとい悪党――それを討ち取るために、精いっぱいの智恵を絞ったところで不思議はあるまい」