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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
「下女のお鈴が身投げするとき、抱いていたという仏像か」
「ヘエ。――旦那様はことにあの極彩色の御仏像がお気に召したようで、この四五年はお手許から離したこともございません」
「それが一と晩のうちに代っていたというのか」
「ヘエ――」
「親分、色を洗い落したんじゃありませんか」
ガラッ八が横から口を出しました。
「いや、極彩色のは仇っぽい仏様で、どっちかというと嫌らしい出来だったというじゃないか。これは最初から素木だし、大変な良い出来だよ。素人の俺が見てさえ頭が下がるんだもの――おや?」
平次は仏像の下、台座の裏を覗いて見ました。
「何かあるんですか、親分」
「銘があるな――琢堂――と読めるが、こいつは名人と言われた鎌倉の野沢琢堂だろう」
それはあまりにも有名な仏師でした。左甚五郎は彫物大工ですが、野沢琢堂は見識のある仏師で、関東地方に幾つかの傑作を遺しておりますが、この普賢菩薩なども、数ある琢堂の傑作の中でも屈指の数に入るものでしょう。
「親分、あっしにはだんだん分らなくなりますよ。こいつはどういう判じ物でしょう」
八五郎はとうとう投げ出してしまいました。お鈴の死と、京屋善八の死を繋ぐ、何か重大な事情がありそうです。