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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
手代の友三郎は二十二三。目から鼻へ抜けるような男で、店中の評判を聴くと、綺麗な下女のお鈴と気が合っていたらしく、お鈴が死んだ後は、すっかり憂鬱になっていることも事実ですが、千次と一緒に店二階に寝ている友三郎が、夜中に脱け出して、主人の善八を害めるということは考えられないことです。
もう一人の手代千次は、女とは縁の遠い辛抱男で、一面主人の気に入っていたことも事実ですが、物に決断のない男で、人を殺すような性質でないことは、大番頭の久助が保証します。
小僧の幾松はまだ十一。――こう勘定して来ると、京屋の奉公人の中には、疑いを挟まれるものは一人もありません。
「奉公人の身許は皆んな確かだろうな」
平次は最後の念を押しました。
「それは大丈夫でございます」
「一番古い奉公人は誰だい」
「私で」
「一番新しいのは」
「お吉でございます。これはまだ七日くらいにしかなりません」
「それから」
「私の次は友三郎で、その次は千次、幾松の順になります。お吉は一番新しくて、お吉より二日古いのがあの島吉でございます」
「あれでも役に立つのかな」
同じ場所ばかり掃いている島吉の魯鈍さには、さすがの平次もおどろいた様子です。