Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
「何だと、もういちど言ってみろ、八」
「脅かしちゃいけませんよ」
平次が果し眼で詰め寄るのを、ガラッ八はおどけた手付きで尻ごみしました。
「脅かすわけじゃないが――なるほどそう言われてみると、火元の半分は寺だ」
「あとの半分は武家屋敷と町家だが、不思議なことに、火事の晩というと法事をしている」
「そいつはどういうわけだ、八」
「切支丹じゃありませんか、親分」
「…………」
八五郎の想像は飛躍しますが、まんざらそれは根も葉もないことではありません。天草、島原の切支丹一味が亡びてから、長いあいだ経ちましたが、全国に隠れた切支丹宗徒は、容易に剿滅したわけではなく、現に二年前の万治元年には大村領の邪宗徒六百三人を死罪にし、幕府は切支丹禁制の令を厳にし、奴僕を召抱えるのに、檀那寺の証文を必要としました。この年万治三年に入っては、さらに細川越中守、稲葉能登守、中川佐渡守の領地で、天主教徒を捕えて誅しております。
江戸にその頃、表向き切支丹宗徒はなかったわけですが、原主水以来の熱心な信者が、刑戮に洩れて、地下に潜み、あるいは転び切支丹となって、ひそかに邪宗門帰依を続けていたことは充分想像されることで、ガラッ八がこう言った言葉も決して好い加減な出鱈目ではなかったのです。