Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
「お元の外には誰も親分の部屋へ入った者はありませんよ」
廊下の側に陣取って、あまり酒を飲まなかったらしい子分の喜太郎は言うのです。
「その私が、親分が殺されているのを見付けたじゃありませんか」
強か者らしい感じのする下女のお元は、敢然として抗議しました。
「お元がここへ入るのを見ていたのは誰だ」
佐吉は四方を睨め廻します。
「あっしで」
喜太郎は顔をあげました。
「お元が親分の部屋へ入ってから、悲鳴をあげるまでに、少しは間があったのか」
「いえ、唐紙をあけるとすぐ張りあげたようですよ」
「それじゃ親分を殺す隙はなかったはずだ――」
「まアそんなことで」
これでは仕様がありません。
もっとも溝口屋三十八人の子分には、いろいろの分子が交っておりました。その中には、日頃親分の酷薄な態度を怨んでいる者もあり、中にはかつて親分鐘五郎の敵方だった者の子分で、途中から転げ込んで来た者もないではありません。現に顔の良い六助や勘次も、もとを洗えば飯田町の伏見屋の子分で、溝口屋に盾を突いた仲間ですが、今では鐘五郎の傘下に馳せ加わり、忠勤を励む外には、何の余念もないことは、溝口屋一家の者は言わずもあれ、大きく言えば江戸中で知らない者もなかったのです。