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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens
「…………」
「見ろ、春松は縛られているんだぜ。あの晩ここへ来て、二人で何をやったんだ」
平次は後に従うガラッ八と、その背中にいる春松を指さしました。
「尺八を吹いていましたよ、親分」
「二人でか」
「ヘエ――」
「一人は抜け出して、溝口屋へ忍び込んだはずだ」
平次の論告は峻烈です。
「とんでもない、親分」
「お前が春松をつれて来たのを、誰知るまいと思うだろうが、大の男が大の男をおんぶして歩くのを、月がなくたって、江戸中の人が知らずにいると思うか」
「春松に尺八を吹かせて、お前が脱けだしたに違いあるまい。――溝口屋の裏から忍び込んで、宵の内に奥に潜り、鐘五郎が部屋へ入ってくると、衝立の後ろから飛び出して、背中を一と刺しやったはずだ」
「親分、違います。違いますよ」
「いや違わない、お前の外に鐘五郎を殺した者はない」
「あの明るい廊下を、三十何人の子分の眼をかすめて、逃げ出す工夫はありません」
「それ見ろ、廊下の明るいことも、子分が三十何人で飲んでいたことも、お前はみんな知っている」
「…………」
「その廊下を通る工夫はあったはずだ。――喜太郎が小用に立った時かな。――」
「…………」