Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十四)雛の別れ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 114,139 characters · 233 screens

Aozora Bunko

そこを逃げ出すのは容易ならぬ仕事でしたが、幸い用意した柿色の風呂敷が役に立って、喜太郎が小用に立った間に廊下を抜け、自分の長屋に逃げ帰って、春松を送り返した手順は、平次が想像したものと寸分の違いもありません。

「こうなれば、逃げも隠れもしません。溝口屋殺しはあっし一人の罪、春松だけは許してやって下さい。お願いでございます。親分」

馬吉は後ろに手を廻して、観念の眼をつぶります。

「とんでもない、馬吉一人の罪じゃありませんよ。――あっしも相談に乗ったんだから、一緒に縛って下さい。――仲よく処刑台に並ぼうじゃないか、なア、馬吉」

春松は膝と手で這うように、平次と馬吉の間に割って入りました。

「何を言うんだ。足の不自由なお前に、こんな大それたことができるものか」

「足が不自由だって、俺は臆病じゃねえ」

「何をッ」

二人の争うのを、

「まア、いい。春松も追ってお調べがあるかも知れないが、お上の御沙汰を待つがいい」

平次は宥めて馬吉を引っ立てました。

「親分、お願いがあるんだが――」

「何だ、未練がましいことを言うなよ」

「そんなことじゃありません。縄付のまま、溝口屋の庭を通って行って下さい」