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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme

Aozora Bunko

三十二

浅井の行ってしまった寂しい部屋のなかに、お増は毎日湯疲れのしたような体を臥たり起きたりして暮したが、どうかすると草履ばきで、外へ散歩に出かけることもあった。

部屋の硝子障子から見える川向うの山手の方に、がったんがったんと懈い音を立てて水車が一日廻っていたが、小雨などの降る日には、そこいらの杉木立ちの隙に藁家から立ち昇る煙が、淡蒼く湿気のある空気に融け込んで、子供の泣き声や鶏の声などがそこここに聞えた。春雨のような細い雨が、明るい軒端に透しみられた。

垠の部屋へ来ている、気楽な田舎の隠居らしい夫婦ものの老人の部屋から碁石の音や、唐金の火鉢の縁にあたる煙管の音が、しょっちゅう洩れて来たが、つい隣の隅の方の陰気くさい部屋にごろごろしている一人の青年の、力ない咳の声が、時々うっとりと東京のことなどを考えているお増の心を脅かした。

「毎日雨降りでいけませんな。」

廊下へ出て、縁に蘇鉄や芭蕉の植わった泉水の緋鯉などを眺めていると、褞袍姿のその男が、莨をふかしながら、側へ寄って来て話しかけた。男はまだ三十にもならぬらしく、色の小白い、人好きのよさそうな顔をしていた。