Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
Lesen Sie 春泥・三の酉 (しゅんでい) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.075 Zeichen · 173 Bildschirme
……年ちゃんの家は、材木座で、細い砂みちづたいに行くと、海まで一丁となかった。
――あッといって、あたしおもわず立留ったのよ……
と、おさわは、やゝ大仰に、胸を反らしてみせたのである。
――どうして?
と、勿論、ぼくはわらった。
――だって、あなた、その海の波のいろ。……青いなんてものじゃァないの。……紺なの。……びッくりするような、何んともいえない、凄い紺いろなの……
――じゃァ、もう、そのとき、日が落ちていたんだろう。
――でも、まだ、空はあかるかったわ。……それだけに、よけい……一層、それが際立ってみえたのかも知れないのね。……途端に、あたし、おもいだしたの。
――何を?
――熊谷の芝居の、“組打”んとこのあの海の道具を……
――違うよ、矢っ張、二長町仕込は、いうことが……
大正期の、菊五郎、吉右衛門という二人の若い役者。……その人気によって盛り上げられたいわゆる市村座時代は、また、東京の、新橋、赤坂、葭町、柳橋といった、それ/″\の花柳界にとっても黄金時代だった。……おさわの、たま/\いったその“組打”の海の一ト言は、ぼくに、ゆくりなく、ありし日の、自動車のまだめずらしかったころの東京の人情をおもいださせたのである。