Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
Lesen Sie 春泥・三の酉 (しゅんでい) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.075 Zeichen · 173 Bildschirme
十
――が、そんなものに逢ったって仕方がない。それより黙って帰ったほうがいゝ。――ふいとなぜかそんな気がした。
「ぼくァ西巻だ。――よろしく申してくれ。」
そういってかれは、手に下げた小田原屋の漬物の樽……かれの歳暮の挨拶はいつもそれときまっていた……をそこへ置くと、そのまゝすぐ、その無愛想な女中をうしろに門の外へ出た。――で、一人寂しく矢の倉の河岸を両国のほうへあるいた。
十
「おや?」
急にかれは立留った。――その少しまえ、向島で、牛の御前のまえで田代がそうしたように。――なぜならいまゝで展けていた河の光景……あかるい河のうえの光景が急にそのときかれのまえに姿を消したから……
そこに、河岸から、桟橋でつながれた船料理。――いつみても客のない、ガランとした……ことに寒い時分にあって一層それの酷い……いえば手持無沙汰な感じに水の上をふさいでいる大きな船のさまと、それへさそう無器用な門とのぽつねんとそこに突ッ立っているのはむかしながらのけしきだが、そのあと、そこから両国の袂の、一銭蒸汽の発着所のあるところまで、以前はそこに、河の眺めを遮る何ものもなかった。むしろ寂しい位おおどかに往来する船のすがたや、いそがしく波を蹴立てゝ行く蒸汽のさまや、まん/\と岸を浸してながれる青い水のひかりや、その水を掠めて飛ぶ白い鴎のむれ