Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

つまり紀代子の亭主は世間にざらにある若い亭主の顔をしていたのである。

二、三間行くと、紀代子はいきなり振り向いて、ペロリと赤い舌を出した。豹一の自尊心は簡単に傷ついた。丁度自分の身なりの貧弱さを気にしながら、おずおずとあとに随いて行きかけた矢先だったのである。紀代子の舌に噛みついてやりたいぐらいのいまいましさだったが、それが実行出来そうもなかったので、一層口惜しかった。豹一はこそこそと反対の方へ引きかえして行った。靴の底がすり切れて、ペタペタと情けない音を立てた。

しかし紀代子も実は恥しい想いをしていたのである。豹一の顔が暗がりからぬっと出て来た時、紀代子は傍に立っている亭主のニキビだらけの顔を実に醜いと思った。さすがに豹一は未だ少女のような顔をしていたのである。しょんぼりしていたので、一層可憐だった。洋服がお粗末だったので、にやけて見えることも免れていた。紀代子はなんとなく豹一の手前恥しくなった。亭主の顔のことばかりでなかった。彼女は丁度ハンドバッグをねだって、「世帯が荒い。もったいない」と亭主にはねつけられていたところだった。亭主は官庁に勤めていたが、未だハンドバッグが簡単に買えるほどの月給は貰っていなかった。