Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、あっという顔付きで立ちすくんでいたが、やがて固い歩き方で寄って来ると、

「暫く……。どうしてるの」と、多鶴子に言葉を掛けた。

「…………」多鶴子はハンドバッグの金具をパチンとしめなおした。かすかに手がふるえていた。

「新聞で見たよ、『オリンピア』に出ているんだってね? ――まあ、元気でやりなさい」豹一の方をじろりと見てから、もう一度多鶴子の顔を見た。多鶴子は、

「ありがとう」と、小さく言った。男は手をあげて、

「じゃ」行ってしまった。

「あ」多鶴子は靴の踵をちょっと動かしたが、あとを追うのを思い止った。そして、暫く立ちすくんでいたが、やがて物も言わずに歩き出した。

「誰ですか?」豹一はやっと訊いた。

「矢野さん」それっきり多鶴子は口を利かなかったから、豹一はいや応なしに、「私は矢野さんが好きでした」とさっき不二屋できいた多鶴子の言葉を取りつく島のない気持で想い出さされてしまった。なお、今しがた矢野さんが残して行った見下すような(――と豹一は思った――)一瞥を想い出した。

豹一は自分の表情をもて余した。多鶴子の足が急に早くなったので、瞬間少しは歪んだにちがいない表情をそれと気づかれるおそれがなくて、もっけの倖いだと思ったものの、多鶴子の足が早くなったのは、それだけ心が動揺している証拠だと、豹一にもその動揺がそのまま