Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.131 Zeichen · 423 Bildschirme
お君はそれも気にかかるけれど、いま吠えたムクの声も気にかかります。障子をあけて見るとムクが、今しも馬に乗って馬場の外へ打たせて行く能登守の馬を追いかけて、その足許に絡みつくようにして吠えています。
「まあ、あの犬が殿様に……失礼な」
お君は驚きました。ムクを呼んで叱らなければならないと思いました。
「お嬢様、ムクが殿様に失礼をするといけませんから呼んで参ります」
と断わって、あわててそこを駈け出して、
「ムクや、ムクや」
お君はやや遠くから呼びました。お君から呼ばれさえすれば、いくら遠くにいてもかえって来るムクがこの時は、いよいよ能登守の馬の足に絡みついて、遠くから見ていると馬と人とを襲うているように見えます。
それを馬上の能登守がもてあましているようでしたから、お君は安からぬことに思うて息を切って、馬場から牧場の方へと枯草の原を駈けて行きました。
そのうちに、駒井能登守はたまり兼ねて馬から下りてしまったようであります。或いはムクが烈しく襲いかかったために落馬をされたのではないかと、お君はいよいよ安からず思いました。
馬から下りた能登守が、馬の口を取っていると、その時にムクも温和しくなってしまいました。