Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠3

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.131 Zeichen · 423 Bildschirme

Aozora Bunko

その他の連中も、剃刀、脇差、簪の類、得物得物をしっかりと持って必死の覚悟。

「あれ――火がついた」

吊られてあった篝火が、誰が切ったか地に落ちて、それが小屋の一角に燃えうつる。誰も消す人はない。

「あれ親方さん、火が。この小屋が焼けてしまいますよ」

火を見た美人連は、せっかく励まされた勇気が一時に沮喪しました。莚張りと幕と板囲いの小屋、火の手は附木を焼くよりも早い、メラメラと天井まで揚る赤い舌。

「そうれ火事だ」

組んずほぐれつしていた命知らず、さすがに火には驚いて、組打ちをしながら逃げようとして一層の大混乱。美人連を取囲んだ一隊は、早く攻め落して分取りをほしいままにしてから火を避けようと、強襲また強襲。

火の威勢が、いよいよ天井を這い上って、黒い煙と白い煙が場内に濛々と湧き出したその中から、

「うわーう」

旺然として物の吼ゆる声が起りました。これは獣の吼ゆる声。この場の人間どもの怒号、叫喚、愚劣、迷乱を叱咤するようにも聞きなされて、思わず身の毛をよだてるほどの一声でありました。

ムクは強いけれど、かわいそうに鎖につながれていました。こんな騒ぎになる前に誰か気を利かして鎖を解いてやればよかったものを、その方には誰も気がつく者がなかったから、鎖につながれたままでいるうちに、火がその背後から燃え出しました。