Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

ひがんすぎまで

彼岸過迄

夏目 漱石

Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme

Aozora Bunko

四

四

父と母の間はどれほど円満であったか、僕には分らない。僕はまだ妻を貰った経験がないから、そう云う事を口にする資格はないかも知れないが、いかな仲の善い夫婦でも、時々は気不味い思をしあうのが人間の常だろうから、彼らだって永く添っているうちには面白くない汚点を双方の胸の裏に見出しつつ、世間も知らず互も口にしない不満を、自分一人苦く味わって我慢した場合もあったのだろうと思う。もっとも父は疳癖の強い割に陰性な男だったし、母は長唄をうたう時よりほかに、大きな声の出せない性分なので、僕は二人の言い争そう現場を、父の死ぬまでいまだかつて目撃した事がなかった。要するに世間から云えば、僕らの宅ほど静かに整のった家庭は滅多に見当らなかったのである。あのくらい他の悪口を露骨にいう松本の叔父でさえ、今だにそう認めて間違ないものと信じ切っている。

母は僕に対して死んだ父を語るごとに、世間の夫のうちで最も完全に近いもののように説明してやまない。これは幾分か僕の腹の底に濁ったまま沈んでいる父の記憶を清めたいための弁護とも思われる。または彼女自身の記憶に時間の布巾をかけてだんだん光沢を出すつもりとも見られる。