Japanische Klassiker mit Furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme
そこへ母や妹が入って来さえしなければ、笹村はいつまでも甘い空想を乱されずにいることが出来た。
たまには傘をさして、橋を渡って、山裾の遊廓の方へ足を入れなどした。京の先斗町をでも思い出させるような静かな新地には、青柳に雨が煙って檐に金網造りの行燈が点され、入口に青い暖簾のかかった、薄暗い家のなかからは、しめやかな爪弾きの音などが旅客の哀愁をそそった。笹村は四、五歳のおり、父親につれられて行って、それらの家の一軒の二階の手摺り際から眺めた盆踊りのさまや、祭の日にこっちの家の二階から向かいの家の二階へかかった床に催される手踊りなどを思い出していた。
笹村は奥まった二階の座敷で、燭台の灯影のゆらぐ下で、二、三杯の酒に酔いの出た顔を焦らせながら、たまには上方語のまじる女たちの話に耳を傾けた。女たちのなかには、京橋の八丁堀で産れて、長く東京で左褄をとっていたという一人もあった。
「ここは駄目です。さアという場合に片肌ぬぐなんてことはありませんから。」
その女は生温い土地の人気が肌に適わぬらしく見えた。
「その代りお座敷は暢気ですの。」
東京へ帰って来てからの笹村は、しばらく懶け癖がぬけなかった。