Japanische Klassiker mit Furigana
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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme
そこは梅で知られている家であった。
「こんな処は、半鐘でも釣っとくがいいや」
揉あげは起って欄干の傍へ往って手を叩いた。上の方で甲高い女の声が応じた。
「やっと聞えやがった」
揉あげはそう云い云い眼をまえへやった。それは二時比で、午近くから嫩葉曇に曇っている空を背景にして、大井から大森の人家の簷が藍鼠の海に溶けこもうとしていた。眼を落すと嫩葉をつけた梅の幹がいちめんに古怪な姿を見せていた。
「よし、いい」丹前は気が注いたように揉あげの背後姿へ眼をやった。「大丈夫だ、うんと飲みな」
角刈は対手になった。
「大将、俺が一度往ってみようか」
「待て、おめえは、まだいけねえ」
「だって、俺が往って、二つ三つ撲りとばしたら、話が早くつくじゃねえか」
「待て、待て、俺に考えがある」
「どんな考えだ」
「待て、待て、ゆっくり飲みながら話そう」
そこへ一方の襖が啓いて眼の大きな年増の婢が入って来た。婢はお時と云うのであった。お時は二本の銚子を手にしていた。お時は丹前に愛想笑いをした。
「お酒でしょう、旦那」
揉あげが横あいから口を出した。
「お時、半鐘でも釣っとけ、呼ぶに骨が折れてかなわん」