Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

Lesen Sie 春泥・三の酉 (しゅんでい) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.075 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

六

」

「で、何とかいって行ったか?」

「いゝえ、じゃァまた来る、そういってすぐお帰りになりました。」

「何にも外にいわなかったか?」

「いゝえ、何にも。――いつもと違ってなんだかむずかしい顔をしておいでゞしたわ。」

「ごた/\が出来たんだ、ごた/\が。――それでみんなほう/″\駆けずりまわっているんだ。」

「…………」

「昨夜だって、一昨日の晩だって、ろくにこっちは寝てやァしない。」

「………」

「外には誰も来なかったか?」

「いゝえ、誰も。」

「昨日ぐらい菱川のところから誰か来やァしなかったか?」

「いゝえ。」

「来なかったか?」

「えゝ。」

「可笑しいな。」

「来るわけになっているんですか?」

「なっているんだ。」

そういいながら、かれは、上着の内衣兜から袱紗にくるんだ紙入を出して箪笥のうえに置いた。

そのなかの五十円……

何にも知らないかの女は炬燵のほうからかれの平生着をもって来た。――そのかの女の肩をいきなりかれは引きよせた。

「寂しかったろう、おい……?」

犇とばかりかれはかの女を抱きしめた。

六

あくる朝、起きぬけに……といってももうそのときは十時をすでにすぎていたが、いそいで田代は三筋町の小倉のところへと家を出た。