Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんでい

春泥・三の酉

久保田 万太郎

Lesen Sie 春泥・三の酉 (しゅんでい) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.075 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

六

――昼間、あの人込みの中をあるいてると、死んだ父だの母だのが、どこからか、ヒョックリ、でゝでも来るような気がしてなつかしいの。

――そうか、じゃァ、昼間にしよう。

――その代り、マスクをかけるわ。

――だれが?

――あたしが。

――何んのために?

――あなたのためによ。

と、おさわは、ニッコリ、きれいな歯をみせてわらって、

――一日だけ、あなたの奥さんになって上げるのよ。

――あなたの奥さんに? ……

――あなた、いま、いったじゃァありませんか、女のほうでマスクをかけてると、ちゃんとした夫婦として、人が彼これいわない……

――あゝ、それか……

――その代り、帰りの金田の勘定は、りッぱにあなたが払うのよ……

六

……おさわは、しかし、その年の酉の市の来るのをまたずに死んだ。……二三年まえのはなしである。

たか/″\とあはれは三の酉の月

というぼくの句に、おさわへのぼくの思慕のかげがさしているという人があっても、ぼくは、決して、それを否まないだろう……

(「中央公論」一九五六年一月)