Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんでい
春泥・三の酉
久保田 万太郎
Lesen Sie 春泥・三の酉 (しゅんでい) von 久保田 万太郎 (くぼたまんたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.075 Zeichen · 173 Bildschirme
……しずかに晴れたその青空の下に、そのとき、一文獅子の太鼓の音が遠くさびしくたゞよっていた。
かれは窓を閉めて床のうえに返った。いそいでかれは手を叩いた。――返事がないとみると「おます、おます……」とかぶせてまた大きな声で呼んだ。
「御用で?」
唐紙をあけて顔を出したのは書生の西崎だった。
「おますはいねえのか?」
「一寸いま買物にお出かけになりました。」
「正ちゃんはどうした?」
「先刻学校のお友だちのところへ行くといっておでかけになりました。」
「と、誰もいねえのか、階下に?」
「へえ。」
「何時だ、いま?」
「もう少しまえに三時をうちました。」
「三時を?」
「へえ。」
「湯に行くからすぐ支度しねえ。」
ふいとかれはこういって寝巻――長襦袢は、あの晩、医者の来たあとですぐ脱いだ――のヒラグケをしめ直した。
「へえ?」
西崎は自分の耳を疑うように訊きかえした。
「湯に行くから石鹸や何か階下へ出しときねえ。」
「しかし……?」
「早くしねえ、早く……」
西崎の何かいいかけるのを押えるようにかれは立上った。枕許のお召の丹前を取って寝巻の上に引ッかけた。――それをみると西崎は狼狽てゝ階下へ下りて行った……