Japanische Klassiker mit Furigana
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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
Lesen Sie 木綿以前の事 (もめんいぜんのこと) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.586 Zeichen · 348 Bildschirme
すなわち遊女が折々来て休むような家の壁に、いつのまにか評判の女の名が書いてあって、そのわきには命をやりたいなどという言葉が、添えてあったかも知れぬのである。そうして落書の筆者の知れぬところに興味があった。この方こそ或いは市振の一つ家などでの経験であったかも知れない。不思議はないと小宮君は言われたが、私は毎度この芭蕉翁の物を識っているのには驚く。
とにかく遊女が港でも町でもない土地へ、稼ぎに行くということは芭蕉翁もよく知っていて、曾良の思いつきに打ってつけたような、しかし新しい俳諧の境地を屈折させて、誠に良き師匠らしく、次の附句を迎え導いたのである。それは懇切の至りではあったが、同時にまたこの頃そういった遊女の生活が、かなり普通の社会相でなかったら、できないことであったように私は考える。北国では遊女が折々出てあるくということは、偶然ながらまた一つの証跡を留めている。それは『比佐古』の第三の歌仙に、
それ世は泪雨と時雨と 里東
雪舟に乗る越の遊女の寒さうに 野径
壱歩につなぐ丁百の銭 乙州
とある中の句で、橇に乗せてもらって寒そうにあるいていては、まさか名聞にも伊勢参宮を致しますとは言えまいし、そのうえに附句の一歩だの丁百の銭だのというのが、何となくその遊女の高尾・薄雲ではなかっ