Japanische Klassiker mit Furigana
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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
Lesen Sie 木綿以前の事 (もめんいぜんのこと) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.586 Zeichen · 348 Bildschirme
そうそう際限も無く空想は展開するはずがない。やがては大津絵のごとく人間の姿態を写し出そうとする者に、その練熟した自在の手法を譲って、消えてしまったのもまた自然である。ただし俳諧の方には北斎・崋山・暁斎・清親を経て、現在の漫画隆盛に到達したような閲歴は無く、人はただ発句の出丸に籠城して、みずから変化の豊かなる世相描写を制限することになったが、そのかわりには事業は最初から、大津の町に売っていたようなちっぽけなもので無かった。僅かな線と彩色とで代表し得るがごとき、手軽な人生のみを目標とはしていなかったのである。
附句を案ずる人たちは、通例はまず絵様を胸に画くべしと教えられていた。歌仙は三十五通りの男女僧俗の、絵額の排列を聯想せしめ、今でも我々は便宜上、この毎二句の続けがらを絵様(タブロオ)と呼ぶことにしている。しかし俳諧のタブロオは固定した平らな画板ではなかった。第一に時の或る長さがあり、起伏動揺があり、きらめきがあり、また物を待つ間の沈黙とも名づくべきものがあった。こういう複雑をきわめた幻の組み合わせを、たとえ前の句の余韻を借りながらでも、たった十四文字か十七文字の日本語の力によって、鮮やかに一座の人々の胸に印象し得たとすれば、その範囲は狭くともすでに大きな事業であった。