Japanische Klassiker mit Furigana
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もめんいぜんのこと
木綿以前の事
柳田 国男
Lesen Sie 木綿以前の事 (もめんいぜんのこと) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.586 Zeichen · 348 Bildschirme
九
ゴゼンはまたオマヘとも謂って、或いは此方が一つ古いかも知れない。やはり嫁迎えのことを熊本県その他で、オミャトリまたはオメャモツなどとも謂っている。漢字に書けば是も御前であって、もとは対称敬語であったことは是でわかる。他の府県殊に東日本の方には、オカタというのがまた主婦のことで、是も決して新しい名称ではない。中古の記録には武家の母や妻女、たとえば足利尊氏のおっかさんなどを大方殿と謂っている。多分はオカタに大を冠せたもので、田舎武士が郷里から携えてきた語だとしても、京都語の北の方や東の対などと別のものでなく、起こりは御前の「前」も同然の「御方」で、敬称であったことは疑いがない。すなわち夫がそう呼んだのが始めてと思われるが、子どもは次第に父の語を真似て、カカサマ、カアチャン一系のいろいろの呼び方が始まった。人が他人の妻をオカカだのオッカアだのと謂うのは、畢竟この舌足らずの音をまた真似したので、カカは決してハハの転訛ではないのである。
九
このオカカないしは刀自の地位は、慣習的にちゃんときまっていた。任務と権能と是に相応する尊敬とが附いていた。あらゆる若い娘たちの先途すなわち到達点、もっと大袈裟な語でいえば女の修養の目的が是にあったとこは、あらゆる若者が家長の地位を獲るのを目標に、努力したのも同じである。