Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「ちッ」と、釘勘は舌うちをしましたが、さりとて、持てあました若殿を、持てあましたまま見すててもおけず、つづいて、炭のように焦げた本堂の板縁へ、十手をさか手にひらりと跳びあがりました。
むッと、面を吹いてくる、熱風と熱気に、
「あッ、万太郎様」
と彼は、思わず袖口で息をおさえながら、
「畳のある所へ、足を踏んごんではいけませんぜ。畳の上へ――」
向う見ずな万太郎も、おそらくそれは感知したでしょう。柱、うつばり、暗澹たる焦熱のやみの中にすべてチラチラと火をハゼておりますが、畳ばかりは一見なんの異状もないように見えます。が、それへ身を乗せたが最後、やわらかに焦げきっている藁の火と共に、どすんと焦土の底へ堕ち込んでしまうことは明らかであります。
と――
板縁を廻って、奥と持仏堂の境まで来た時。
突然、一方の長廊下に当って、バリバリッという凄い物音です。
と同時に、何者か、煙をくぐッて、駆け出したような跫音を聞きました。
「やっ?」
いったん、そこを駆けぬけた万太郎が、不審と、きびすを返して飛んで来ると、今しも一室の源氏窓を蹴破ッて、火の粉と共におどり出した、大童な男の影。