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Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、その猪牙船は柳原の土手の間を漕ぎのぼって、やがて紅梅河岸まで来ましたが、そこで岸へ寄せる様子もなく、なおグイグイと漕ぎ進めてまいります。

そこは、上れば上る程、両岸が高くなって、水際は芦草に埋もれ、空は高々と立つ左右の樹木につつまれて、葉の落ちている冬木の梢にも一つぶの星さえ見えないほどな暗い谷間。

猪牙船がそのお茶の水の真ッ暗な水上をすべって行くと、寝ていた黒い頭巾の男は、やおら掻巻を刎ねのけて、ふッ……と舳の舟行燈を吹き消しました。

チョロチョロと何処かで水の湧く音がするほか、上流にも下流にも、ここら辺りを通う舟はありません。

そして、朽ち木の枝を手懸りに、一方の岸へ徐々と舟脚を寄せておりましたが、繋綱を取りながら覆面の男が、真ッ暗な中でこう呟いたのが水の静寂に響いて大きく聞こえました。

「なあ率八、梟じゃねえが、この頃は、すっかり暗闇に眼が馴れて来たような気がするじゃあねえか……」

*   *   *

ところでその晩、川見廻りの役人に怪しまれて、永代橋の川番所へ、繩に曳かれて行ったのは、お蝶を乗せた苫被りの売女舟です。

「吟味は明日いたすから、今夜はここで神妙にいたしておれ」