Japanische Klassiker mit Furigana
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みなもとよりとも
源頼朝
吉川 英治
Lesen Sie 源頼朝 (みなもとよりとも) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 306.118 Zeichen · 613 Bildschirme
二
……いや、石橋山でわしが着て戦ったあの破れ鎧のことよ。早く持参せい」
二
やがて、実平がもどると、一領の鎧が、彼女の前に、どさりと置かれた。
「滝口の老母」
頼朝は、そう呼び直して、改まった調子で云った。
「それは石橋山の合戦に、この頼朝が身につけていた物じゃが、後日の証拠にと、残しておいた。――というわけは、その鎧の袖を縫うている箭を見るがよい。たしかに、そちの倅、滝口経俊が射た箭であるまいか」
老母はぎくとしたように、顔蒼ざめておののいた。
「見よ」
「…………」
「手にとって見よ」
頼朝のことばこそ、箭のように鋭かった。
「――鏃だけは取りのけて置いたなれど、箭の口巻を検めて見るがよい。何としるしてある。滝口三郎藤原経俊と――明らかに読まれるであろうが」
「…………」
老母は、鎧のうえに、泣き伏してしまった。
後日の証拠に――
と云った頼朝の意中を窺えば、もういかにわが子の助命をすがっても、云いわけをしてもむだと思いつめたのであろう。痩せ細った頸のあたりの白髪が、鎧にしがみついたまま、ただいつまでも泣きふるえるのみだった。
見るに忍びなくなったのであろう。