Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 156.866 Zeichen · 318 Bildschirme
五
「野郎、神妙にせい、兄などを殺して、太え奴だ」
洲崎の金六は、もう伝之助を引立てて来ました。まだ縄を打ったわけではありませんが、物馴れた鋼鉄のような手が伝之助の手首をピタリと押えているのです。
五
「あッ、それは間違いです。叔父さんは、下手人じゃありません」
美しい声――少しうわずっておりますが、人の肺腑に透るような、一番印象づける美しい声と共に、十八九の娘が飛び込んで来ました。
「お前はお藤、――こんな場所へ入っちゃならねえ」
金六はそう言いながらも、眼は言葉の調子を裏切って、微笑を湛えております。この娘だけが、甲州屋中での、美しい明るい存在だったのです。
「でも、見す見す間違いをするのを見てはいられません」
娘は全身を金六と平次の前へ晒しました。死んだ主人万兵衛の幼友達、江戸一番と言われた蒔絵の名人、尾張町の藤吉の娘のお藤というのはこれでしょう。
若く美しく健康と幸福を撒き散らして歩くような娘で、この陰惨な家には、一番似つかわしくない存在でもあります。それだけにまた、主人万兵衛が可愛がってもいたのでしょう。
「間違いとは何だ、お藤」
と金六。
「でも、伝之助叔父さんは店中で知らぬ者のない左利きで、箸と筆を右に持つのが不思議なくらいです。