Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
豹一は暫く顔をあげることが出来なかった。
一週間経ったある朝、豹一が出社して間もなく、白い縮のシャツの上へ薬剤師や医者の着る白い診療服のようなものを羽織った男が、自転車を押してはいって来て、柱時計を見上げ、
「あ、五分遅刻したぞ。この時計遅れてるのんと違うか」そう言いながら、豹一のうしろの机の埃をぷっと吹いて、「僕、営業主任の園井です。よろしく」と豹一に挨拶した。豹一は周章てて振り向きぺこんと頭を下げた。「出張してましてん。昨夜帰って来ましてん」
園井は未だ三十を余り出ていないのに、半分頭がはげていた。玉子型の顔がてかてかと光って、口髭を小さく生やしていた。社長一人、社員二人の会社で、わざわざ主任だと言いたそうなところが、そんな顔に備っていると思ったが、豹一はべつにおかしいとも思わず、固い表情で、
「暑くて大変だったでしょう」われながら卑屈だと思った。
「いや、暑いの、暑くないのって、ほんまにやり切れんかった」鼻を抜ける声で言って、眼鏡を突き上げると、「さあ、馬力を掛けて行こか。えらい仕事溜ってしもた。忙しゅうてどもならん」ガチャガチャ机の抽斗をあけたり、帳簿をくったりして、いかにも忙しそうな物音を立てていた。