Japanische Klassiker mit Furigana
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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
Lesen Sie 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.593 Zeichen · 325 Bildschirme
「これで失礼します」
こともあろうに、折角新しい珈琲が来た途端に、帰るといい出した豹一に、多鶴子は驚いてしまった。
「まあ、いいじゃありませんの。もう少しゆっくりして下すっても……。そんなに早くお帰りになったら、私怒りましてよ」
本当に怒ってしまった。そして、いま帰られては困ると、多鶴子は必死になって豹一を引き止めた。そんな自分を浅ましいと思うぐらいだった。豹一も、なぜこんなに引き止められるのかと、不思議でたまらなかった。とにかく熱心に引止められたので、豹一はそれを振り切って帰ることに、ちょっとした満足を想った。
「もう、こんなに更くなりましたから……」そう言い捨てて、扉を押した。そして、階段を降りて行った。
「あら、お帰りですの?」女中が玄関へ顔を出した。
豹一はそれに答えず、汚い靴を突っ掛けると、大急ぎで出て行った。犬の遠吠をききながら、住吉線の姫松の停留所まで行き、豹一はやっと車を拾った。帰りぎわに見た多鶴子の哀願的な表情が、なぜか頭を去らなかった。
女中は、豹一を見送ってしまうと、応接間へ後かたづけの顔ではいって行った。彼女はなにか不満だった。